リスク対応策 2020.05.12
RM34 学習されない危機が続く The unlearned crisis continues
For those who prefer to read this column in English, the Japanese text is followed by a British English translation, so please scroll down to the bottom of the Japanese text.
「米国の経済危機はヨーロッパにも飛び火し中南米などの危機と共振する形で世界恐慌にも発展しかねない。米国は官民挙げてなりふり構わぬ火消しに動いているが市場の信頼は揺らいだままだ。日本にとっても、輸出主導の景気の先行きに警戒信号が灯り脆弱な金融システムに激震が走ろうとしている。欧州の金融・保険が危ない。今年夏以降、グローバルな資金を運用する投資家の間でこうした情報が頻繁に飛び交っている。ドイツの保険最大手アリアンツは赤字決算に追い込まれたし、大手スイス銀行であるクレディ・スイスには経営危機のうわさが出て株価が急落、ドイツ銀行による買収説も飛び出した。米国株安に連動して、ドイツ、フランス、イギリスなど欧州株も大幅安となっている。市場は『米景気に二番底懸念が出ているので、欧州の輸出が減り景気が後退する』とみているのだろうか。それもあろうが、金融システムの動揺の連鎖という面が見逃せない。ファンドマネージャーたちが声を潜めて指摘するのが、『クレジット・デリバティブ』という金融派生商品の存在である。
『クレジット・デリバティブ』とは、平たく言えば企業の破たんに備えた掛け捨て保険のようなものだ。企業向けの貸付債権や社債を保有する金融機関は、デフォルト(債務不履行)確率を勘案した一定の手数料を払って企業の破綻リスクを別の金融機関に引き受けてもらう契約を結ぶ。企業が破綻しなければ、手数料は掛け捨てとなる。その代わり、企業が破たんし債務不履行となった場合には、損失はすべて他の金融機関が背負うことになる。」
1.「WEDGE」
新型コロナ・ウイルスの感染拡大によって、いま世界経済は大きな影響を受けている。4月27日「『4年前共和党候補として大統領選に勝利して政権を獲得、それ以降強い保護主義をとり続け、米中貿易戦争を引き起こしたトランプ大統領』と90年前のフーヴァー大統領が重なって映る」と、「リスクマネジメント32-『新型コロナ』がもたらしたビジネスモデルの大変革」と題したコラム記事を投稿した。同じ事を考える人は多いようで、昨日のニュース番組で「池上彰キャスター」が全く同じことを述べていた。
世界経済の危機を記した冒頭の文章を見て、「いつの話題か」と思われた方も多いと思われる。新幹線の車内、また駅売店等でも発売され、筆者を含め多くのファンを持つ「WEDGE」の「2002年10月号」からの抜粋である。まだ「CDS」という略語も付いていない、リーマンショックのさらに前、いまから18年前の記事である。
出張帰りの新幹線で目にして以来、「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」のリスクに着目、以来その動向に注意していた。2008年9月に起きた「リーマンショック」で世間の耳目を開いたこのCDSは、このようにかなり以前からその「リスク」を指摘されていたのである。
2000年ITバブル崩壊、2001年9・11米国同時多発テロ、2002年「エンロン・ワールドコム破綻の企業会計疑惑」と、米国経済を揺るがす事件が同時期立て続けに起こり、その結果訪れたのが大不況。ITバブルで冷え込んだ企業の設備投資は当面期待できないと踏んだFRB(連邦準備制度理事会)は消費者の消費拡大を図る超低金利政策へドライブを掛けた。FRBは6.5%あった金利を戦後最低水準の1%にまで一気に引き下げていった。
効果はまず自動車販売に顕著に現れた。「クルマ一台買うと、安いクルマが一台おまけに付いてくる」状態になった。「マネー」が更に高額な対象へ向かっていくのに、そう時間は掛からなかった。住宅である。1990年代に多くの銀行が利幅の薄い企業向け貸し出しに見切りをつけ消費者への金融にシフト、このなかで生み出されたのが「サブ・プライムローン」であった。法的規制が不十分であり、既に多くの多重債務者を生み社会問題化していたが「経済への波及効果が大きい住宅販売に影を落とすことになる」と規制強化は先送りされることになった。
2,CDS
この流れに追い打ちをかけたのが、アフガニスタンやイラクでの戦争である。経済は既に回復基調にあったが、戦争継続のためには景気回復を絶対に頓挫させない必要があった。超低金利の継続である。行き先を求めたマネーは、更なる住宅ローンの拡大競争を引き起こした。CDSのリスクが指摘され始めた、冒頭の2002年を境に、皮肉にも米国内での新築一戸建て住宅販売件数は急増、バブル経済への道をまっしぐらに突き進んでいった。そしてCDSを大量に引受けた、世界最大級と言われた保険会社AIGは経営危機に、AIG英国ロンドン本部のすぐ横の行きつけだったパブで流れていたテレビは、毎日AIGの特集をしていた。「何時破綻するか」と誰もが思った、「そのうち、100ドルを超えるのでは」と言われた株価は史上最低値の50セント台に急落した、そして「潰せない大きさの保険会社」として米国政府が介入、持ち直したことは誰しもが知るところである。
CDSはクレジット・デフォルト・スワップ(Credit Default Swap)の略で、国や企業のデフォルト(債務不履行)のリスクを取引するデリバティブ(金融派生商品)のひとつである。
国や企業の信用リスクが高まるとCDSの保証料率が上昇する。CDSを開発したのは米国の銀行。銀行が抱える貸出債権のデフォルトリスクを回避することが当初の目的。貸出債権は、債券と違って流動性がなく、売却が簡単ではなかったからである。その後、トレーディングや純投資目的でCDSを売買する投資家があらわれ、一気に市場が拡大した。その結果のリーマンショックであった。
3.大揺れの欧州金融界
1870年、日本は明治3年、当時の大蔵少輔(おおくらしょうゆう:次官)であった伊藤博文が、「国立銀行条例」の制定を目的として、米国の首都ワシントンで銀行制度を視察した。そんな、日本では金融の揺籃期に、欧州では「ドイツ銀行」が誕生した、そして1876年、合併によりドイツ最大の銀行となった。その後も、合併・吸収を繰り返し規模を拡大したが、第二次世界大戦の敗戦によって連合軍により10の銀行に分割された。しかし、1952年に分割されていた銀行が再び合併、ドイツ銀行は復活、欧州最大の銀行となった。
そのドイツ銀行の成長に影をおとしたできごとが、2016年明らかになった「パナマ文書」であった。パナマの法律事務所が作成した、「タックスヘイブンを使った租税回避の実態が詳細に記された膨大な機密資料」の事であり、そのデータを基に捜査が入ったドイツ銀行では、数多くのマネーロンダリングや不正事案が発見され、欧州ではドイツ銀行がその温床になっていたことが明らかになったのである。
2009年業績不振に陥った時は、「ドイツポスト」に救済を求めて一息ついたが、このところ「再燃している」との報道が盛んにされるようになった。市場のモノサシ、株価が2015年頃から下落を続けているのである。2008年のリーマンショックの頃には100ユーロあった株価が、2015年1月には30ユーロ前後まで急落、さらにそれが現在では10ユーロを切って取引されているのである。「リーマンショックの際のAIGの再来を感じている」との報道もある。ドイツ銀行の株価は、「隠れた借金があるのか」と思えるほど、純資産の価値より下がっている。そして、2019年7月には全行員の2割に当たる1万8000人のリストラが発表された。
4.問題の再来
この背景の一つには、過去LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)を不正に操作する事件を起こし、欧米の金融当局に25億ドル(約2700億円)の制裁金を課され、さらに世界各国の多くの企業から損害賠償請求を受けていることが挙げられている。
また、インターネットを中心にした金融界を巡るビジネスモデルの変化の影響を受けていること、更には日本と同様、超低金利政策が長期化、銀行業界の収益が圧迫されていることも影響している。一昨年、2018年11月には、マネーロンダリング(資金洗浄)に関わっていたとの疑惑が浮上、ドイツの金融当局の捜査も受けた。このことによって、経営危機懸念が再度高まり、ドイツ銀行の株は下落、上記のリストラの発表へと繋がったのである。
さらに、ここに来て、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の問題が浮上してきた、「リーマンショックの再来」の可能性である。ドイツ銀行はCDSを大量に発行して売っており、それがドイツ銀行にとって爆弾になると見られているのである。
5.リスクの証券化
金融工学の発展は金融界に多大な恩恵をもたらした。その一つが「リスクの証券化」である。企業の資金調達の最初は資本金である。次に、借入を起こす。資本を出した人は、企業が利益を出せば応分のリターンを得る。一方、借入金は年率何%とあらかじめ決まっている。企業が損をしても得をしてもその値は変わらない。両者のリスクはもともと異なっている。しかし、「価格は上がり続ける」という思いと「レバレッジ戦略」が融合したとき、この至極当然の論理はたやすく捻じ曲げられてしまった。レバレッジとは「てこ」の意味である。「軽いおもり(自己資本)で重い荷物(他人資本)を動かし利益率を高める戦略」が幅を利かせ始めた。「負債を資本化させてしまった」のである。本来違うリスクを同一化、同一視してしまった。リスク評価に於ける根本的な誤謬を犯したのである。
昔、サブプライム問題が米国で起きたとき、多くの専門家は「影響は限定的である」と発言していたのを記憶している。今回の欧州金融界の問題は、「サブプライム問題」、「CDS問題」そして「タックスヘイブン問題」の三重奏である。処理と対応の仕方を誤ると、超弩級の影響となった世界中にそのリスクを拡散する危険がある。
今回のまとめ
ビジネスの進展は新たなビジネス・ツールを生み出し企業収益の手段としていく。しかし、そのリスクの把握が的確に十分におこなわれていなければ、その「反作用」は大きなマイナス要因として企業収益の低下をもたらすことになる。
なぜ、「パナマ文書」に記されたようなビジネスのアイデアが生まれて、進めようとしたときに、十分なリスクマネジメントがなされなかったのであろうか。
ドイツには、世界に冠たる巨大保険会社、巨大再保険会社が存在する、彼らにはドイツ銀行とは全く違う様相がある、リスクマネジメントの専門企業として自らの専門性に磨きを掛けていることが解る。
業務提携をしている世界最大級の再保険会社の本社を以前訪ねた。「地震保険キャプティブ」への「地震保険の再保険のキャパシティ(保険引受枠)」の打ち合わせのためである。
朝9時から夕方5時まで、十数人と会い、彼らのプレゼンを聞いた。そして、筆者は質問した、「どうして、同じ地震保険のことなのに、全然違う部門から、これだけの人が出てくるのか?」と。「彼らは、全員別々のキャパシティ(保険引受枠)を持っているから」と事も無げに答えが返ってきた。
世界最大級の再保険会社は、当然世界最大級、巨額の地震保険の引受け枠を持っている。「リスクマネジメントのため、その膨大なキャパシティ(保険引受枠)を一箇所、一人のトップが管理監督をしないようにしているのだな」と感じた。「こういう再保険会社なら、安心できる、大丈夫だ」と思わされたできごとであった。
そして、いま世界的なリスクとして注目されているのは新型コロナ・ウイルスの感染拡大と事業への影響である。日本の損害保険のように「限定列挙してリスクを引受ける保険証券(列挙危険型保険証券)」ではなく、「すべての関連リスクを引受ける、補償できないリスクはこれとこれ明示する保険証券(オールリスク型保険証券)」が一般的である欧米では、この「新型コロナ・ウイルスの感染拡大による損害の補償」を巡って多くの保険会社と訴訟が起きている。
グローバル・リンクが「キャプティブの設立によって、『広範な補償範囲を有する欧米の損害保険商品を日本へ導入すること』」を主唱してきたが、そのことを明示している事例と言えるのではないだろうか。
執筆・翻訳者:羽谷 信一郎
English Translation
34 – The unlearned crisis continues.
The U.S. economic crisis is threatening to spread to Europe and, by resonating with the crises in Latin America and elsewhere, lead to a global depression. The U.S. government and the private sector are working together to extinguish the crisis, but market confidence in the U.S. remains shaky. For Japan as well, a warning signal about the future of its export-led economy has been flashed and the fragile financial system is on the verge of a major shakeout. Europe’s financial and insurance systems are in danger. Since this summer, there has been a flurry of such information among investors managing global funds. German insurance giant Allianz has been forced into the red, while Credit Suisse, a major Swiss bank, has seen its share price plunge after rumors of a financial crisis and theories of a takeover by Deutsche Bank have emerged. In conjunction with the weakness of the US stock market, stocks in Europe, including Germany, France and the UK, have fallen sharply. Does the market believe that the U.S. economy is on the verge of a double-dip recession and that Europe’s exports will fall and the economy will go into recession? That may be partly true, but the cascade of turmoil in the financial system should not be overlooked. Fund managers are quietly pointing out the existence of financial derivatives called “credit derivatives”.
In layman’s terms, credit derivatives are a form of insurance that can be used to protect against the failure of a company. Financial institutions holding corporate loans and bonds enter into an agreement with another financial institution to underwrite the risk of corporate failure for a fixed fee that takes into account the probability of default. If the company does not fail, the fee is waived. Instead, if the company fails and defaults on its obligations, the other financial institution bears all losses.
1. “WEDGE”
The spread of the new coronavirus is having a profound effect on the global economy,” I said on April 27, 2010, adding that “President Trump, who won the presidency four years ago as the Republican nominee and has remained strongly protectionist ever since, triggering a trade war between the U.S. and China, looks like Hoover from 90 years ago. ” and posted a column article titled “Risk Management 32 – The ‘New Corona’ brought about a major change in business models”. Many people seem to think the same thing, and yesterday on a news program, “Akira Ikegami,” an anchor, said the exact same thing.
Many of you may be wondering when this topic came up in the opening sentence describing the global economic crisis. This is an excerpt from the October 2002 issue of WEDGE, which is sold on the Shinkansen (The bullet train) and at station kiosks and other places, and which has many fans, including the author. The article was written 18 years ago, even before the Lehman Brothers’ collapse, and not even the abbreviation “CDS” was used.
I had been paying close attention to the risks of credit default swaps (CDS) since I first saw the article on the Shikansen on my way home from a business trip, and had been aware of the risks of these swaps since long before the Lehman Brothers collapse in September 2008.
The bursting of the IT bubble in 2000, the 9/11 terrorist attacks in the U.S. in 2001 and the Enron WorldCom bankruptcy scandal in 2002, all of which shook the U.S. economy, resulted in the Great Recession, and companies that had been cooled by the IT bubble found themselves unable to invest in equipment for the time being. The FRB (Federal Reserve Bank) has driven its policy of ultra-low interest rates to increase consumer spending, cutting interest rates from 6.5% to a post-war low of 1% in one fell swoop.
The effect of the Fed’s policy was first and foremost evident in automobile sales. “Buy one car and get one cheap car as a free gift”. It didn’t take long for the “money” to move on to more expensive items. In the 1990s, many banks gave up on lending to companies with thin margins and shifted to lending to consumers, and “sub-prime loans” were born in this context. The legal regulations were inadequate, and although it had already become a social problem giving rise to a large number of multiple debtors, it was decided to postpone the tightening of the regulations on the grounds that “it would cast a shadow over housing sales, which have a large ripple effect on the economy”.
2, CDS
This trend was followed by the wars in Afghanistan and Iraq. The economy was already on the mend, but the continuation of the wars required that the economic recovery never be derailed. It was a continuation of very low interest rates. After 2002, when the risks of CDS were first pointed out, the number of new single-family home sales in the U.S., ironically, skyrocketed, sending the country right into a bubble economy. AIG, one of the world’s largest insurance companies, which had underwritten a large volume of CDSs, was in financial trouble, and AIG was featured every day on television in the pub I used to go frequent next to its London headquarters in the UK. Everyone wondered when the company would fail, and the share price, which was said to be over $100 a share, plummeted to an all-time low of 50 cents a share, and the US government intervened, claiming that the company was “too big to fail”, and everyone knew that it had recovered.
CDS stands for Credit Default Swap, a derivative that trades the risk of a country or company defaulting on its debt.
CDSs are developed by U.S. banks. The initial purpose of CDSs is to avoid the risk of default on the loans held by banks. Unlike bonds, CDSs were not liquid and not easy to sell. Then investors began to buy and sell CDS for trading and pure investment purposes, and the market expanded rapidly. This was the result of the Lehman Shock.
3. The European financial world in turmoil
In 1870 (in the 3rd year of Meiji), Japan’s Vice Minister for Finance,Hirobumi Ito visited the U.S. capital of Washington to observe the banking system with the aim of enacting the National Banking Ordinance. In Japan, the Deutsche Bank was born in the early days of finance, and in Europe it was merged in 1876 to become the largest bank in Germany. The bank continued to expand through mergers and acquisitions until it was split into 10 banks by the Allied Forces after its defeat in World War II. In 1952, however, the divisional banks merged again and Deutsche Bank was restored, becoming the largest bank in Europe.
The events that cast a shadow over Deutsche Bank’s growth were the “Panama Papers” that were revealed in 2016. The Panama Papers are “a vast confidential document detailing tax avoidance through tax havens” prepared by a Panamanian law firm, and the data revealed that Deutsche Bank, which was investigated based on this data, was a hotbed for money laundering and other fraudulent activities in Europe. The company’s performance slumped in 2009, when it sought a bailout from “Deutsche Post”.
When the company fell into a financial slump in 2009, it asked for a bailout from “Deutsche Post” and took a breather, but recently there have been a lot of reports that it is reemerging. The market’s moniker, share prices, have been falling since around 2015: from €100 at the time of the 2008 Lehman Brothers collapse, share prices plummeted to around €30 in January 2015 and are now trading below €10. Some reports are suggesting that “we’re feeling the return of AIG during the Lehman Brothers collapse”. Deutsche Bank’s share price has fallen below the value of its net assets to the point where it seems to have “hidden debt”. And in July 2019, the bank announced a restructuring of 18,000 employees, or 20% of its total staff, in July 2019.
4. The return of the problem
One of the reasons for this is that in the past, the bankers were fined $2.5 billion (about 270 billion yen) by Western financial authorities for rigging LIBOR (London Interbank Offered Rate), and they are now facing claims for damages from a number of companies around the world.
It has also been affected by changes in business models around the financial world, particularly the Internet, and furthermore, as in Japan, the prolonged ultra-low interest rate policy, which has put pressure on the banking industry’s profits. A year ago, in November 2018, the bank was also investigated by German financial authorities for allegedly being involved in money laundering. This reignited fears of a business crisis and led to Deutsche Bank’s shares falling and the announcement of the above restructuring.
In addition, the issue of credit default swaps (CDS) has now emerged, a possible “return of the Lehman Brothers’ collapse”. Deutsche Bank has been issuing and selling large amounts of CDSs, and this is seen as a bomb for Deutsche Bank.
5. Securitization of risk
The development of financial engineering has brought tremendous benefits to the financial world. One of them is the “securitization of risk”. The first step in raising capital for a company is capital. Next, they generate debt. Those who provide capital get a reasonable return if the company makes a profit. On the other hand, the rate of borrowing is predetermined at what rate of return per annum. Whether the company loses or gains does not change its value. The risks of the two are inherently different. However, when the belief that prices will continue to rise and a “leverage strategy” was combined, this perfectly natural logic was easily twisted. The word “leverage” means “lever. The strategy of using a light weight (equity capital) to move a heavy load (other people’s capital) to increase the profit margin has begun to gain strength. This is because they have capitalized their liabilities. This has led to the identification and identification of inherently different risks. This is a fundamental error in risk assessment.
I remember that when the subprime mortgage crisis occurred in the United States in the past, many experts said that the impact would be limited. This time, the problems in the European financial world are a trifecta of the subprime problem, the CDS problem, and the tax haven problem. If it is not handled and dealt with properly, there is a danger of spreading the risk throughout the world as a result of the super-nuclear war.
Summary of this issue
Business development creates new business tools and means to increase corporate profits. However, if the risks are not accurately and sufficiently identified, the “reaction” can be very negative and cause a decline in corporate profits.
Why was risk management not carried out adequately when the business idea described in the Panama Papers was conceived and promoted?
In Germany, the world’s largest insurance and reinsurance companies have a completely different aspect to Deutsche Bank, and they have refined their expertise as a specialist risk management company.
I once visited the headquarters of one of the world’s largest reinsurers with which they have a business relationship to discuss its earthquake insurance capacity for reinsurance to an earthquake insurance captive.
From 9am to 5pm, I met with over a dozen people and listened to their presentations. And the author asked the question, “How is it possible that so many people from completely different departments are coming out of the same earthquake insurance business? And. “They all have different capacities,” he replied casually.
One of the world’s largest reinsurance companies has naturally one of the largest earthquake insurance quotas in the world, in large amounts. For risk management purposes, they are trying to prevent a single top executive from managing and supervising their huge capacity (underwriting limit). I thought, “With a reinsurance company like this, I can feel safe and secure”.
Nowadays, the spread of a new type of corona virus and its impact on business are the major global risks that are attracting attention. In Europe and the United States, it is common for insurance policies to underwrite all relevant risks and to clearly state that the risks that cannot be compensated for (all-risk insurance policies), rather than the limited, enumerated risks of Japan’s non-life insurance policies (enumerated risk-type insurance policies). Lawsuits have been filed with a number of insurance companies over “coverage for losses caused by corona virus”.
Global Link has been advocating the establishment of a captive to “introduce a wide range of Western P&C insurance products to Japan,” and this is an example of how this is clearly demonstrated.
Author/translator: Shinichiro Hatani