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キャプティブ 2020.02.08

キャプティブ 5ーキャプティブに相応しい保険とは②(損害率の低い保険)



「キャプティブ 4」で述べたとおり、キャプティブは、ドミサイル(キャプティブ設立地)から認可を受けた損害保険会社として、「1年に1回決算をおこない保険監督当局に届け出をしなければならない」企業である。収入は、元受保険会社からの再保険料で明確であるが、支出は保険事故の有無によって変わる。そのため、支出した(また、保険期間中に事故が発生して、保険金支払いの可能性がある)再保険金に関して、「明確性が高い保険がキャプティブプログラムに相応しい保険」となる。

さらに、キャプティブは、保険会社であるため損害率の高低がキャプティブの決算、設立の効用を大きく左右する。そのため、親会社の決算にマイナスの影響を与えないような的確な再々保険の手配が肝要であるが、この「再々保険の手配が可能な保険であることも、またキャプティブプログラムに相応しい保険」の必須条件である。

1.保険金支払いの明確性:ロングテイル

「『ロングテイル』とは?『テイル』とは英語で『尻尾』の意味を持ちます。事故発生から保険金支払までの間に長期間を要することを『尻尾が長い』ということがあることから『ロングテイル』という表現をしています。(出典:「金融庁」ホームページ)

事故が起きて保険金の支払が最終的に完了するまでに長期間かかるような保険、これを「ロングテイル」と呼ぶ。その例としては、長期間の裁判の結果、損害額が確定することが多い、傷害の後遺症などを支払う保険や労災保険等があり、事故が発生してから、すべての支払が終了するまでに何十年も掛かることもある。

したがって、このような保険では、個々の事故に対して保険会社(キャプティブ)が通常積み立なければならない「支払備金(保険金支払いに備えるお金)」に関して、キャプティブの設立地(ドミサイル)の保険監督当局から厳しい要求が突きつけられることになり、「キャプティブ設立の意義と可否」そのものに関しても、大きな影響を与えることになると考えられる。

また、「再々保険の手配」に関しても、「『キャプティブのリスク=最終的にはキャプティブの設立地(ドミサイル)のリスクとなる』を一切残さない等の相当厳しい指示が出される」可能性が高く、キャプティブの組成、設立も困難になることが予測されるため、キャプティブに相応しい保険とは言えない。

少し、専門的になるが、この「支払備金」には、決算期において、「既に報告を受けた事故につき個別に支払額を見積もる『普通支払備金』」と、「まだ支払事由の発生の報告を受けていないが、保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認める保険金等について見積もりにより計算する『既発生未報告損害支払備金』」の2つが存在する。「既発生未報告損害支払備金」は、「Incurred But Not Reported Reserve」の頭文字から、「IBNR備金」と呼ばれ、同保険に関する過去の支払記録の統計データを使用して支払総額の予測、その予測金額と普通備金の差額を積み立てることになる。

したがって、このようなロングテイルの保険をキャプティブの対象とすると「キャプティブの設立には関しては課題が非常に多い」ため、「ロングテイルではない保険」をキャプティブの対象にすべきであると考える。

2.損害保険会社の収益構造

キャプティブの収益構造をみるため、保険会社、ここではキャプティブを対象としているので、損害保険会社に絞ってその収益構造について述べたい。損害保険会社の収益構造を単純化すると、「①収入を得る、②そのためにはその保険料を得るために掛かる人件費、物件費等が必要であり、③保険事故による損害が発生した場合に支払うべきお金が必要」といえる。①は「保険料」、②は「事業費」、③は「保険金」と呼ばれる。

① 「保険料」とは、一般的には「元受正味保険料」(保険販売で得た保険料(積立保険料を除く))のことを指し、これに「受再正味保険料」(他の保険会社から再保険を引き受けたときに受け取る保険料)を加え、「出再正味保険料」(他の保険会社に再保険を出したときに支払う保険料)を控除した数値が「正味収入保険料」と呼ばれる。一般企業でいえば「売上高」に相当するものと考えることができる。

② 「事業費」とは、「保険引受に係る営業費及び一般管理費、そして諸手数料及び集金費」の数値である。よく使われる「事業費率」とは、「損害保険会社が受け取った保険料に対して、保険の募集や維持管理のために使用した費用の割合」を示したものをいう。

③ 「保険金」とは、一般的には「元受正味保険金」(支払った保険金)のことを指し、「支払った保険金」に「受再正味保険金」(他の保険会社へ再保険で支払った保険金)を加え、「出再正味保険金」(他の保険会社から再保険で回収した保険金)を控除したものを「正味保険金」と呼ぶ。「損害率」とは「保険料に対する『支払った保険金と損害調査に要 した費用の合計額』の割合」を示す。

3.キャプティブの収益構造

なぜ、全世界で7000社ものキャプティブが設立されるに至ったか、その「答え」が、この損害保険会社の収益構造から読み取れる。上記、①に関して、大きな「保険料収入」が見込め、③については少額の「保険金支払い」、これらが保険数理的に予測できる案件であれば大きな収益をあげることができるからである。

損害保険会社の経営上大きな負荷となっている経費は、上記②の事業費、なかでも「人件費」といわれるものである。1996年4月、改定保険業法が施行され,8月には、大手生命保険会社6社がそれぞれ損保子会社を設立、全社で50万人規模になった自前の強力な保険販売網「営業職員」(生保レディ)を活用して損保市場になだれ込んだ。しかし、2020年2月現在「損保子会社」として存在しているのは、ただ一社、明治安田損保のみである。

他のいずれの損保子会社は、金城湯池と予想した「自動車保険」を主戦場と考え、自動車保険販売に資本を集中投下した。ちょうどこの頃、経営コンサルタントを拝命した筆者は、米国での自動車保険の状況を熟知していたため、「自動車保険市場からの撤退」を強力に経営陣に進言した。「自動車保険はいずれIT投資の多寡によって勝敗が決まる」と踏んでいたからである。英邁な経営陣は、2004年の合併時にそのことを実現、「一切の自動車保険の販売から撤退、他社に契約の移行をおこなった」のである。その結果が現状となっているのではないだろうか。

生命保険会社は、強力な販売網は有していても、「保険金の査定、支払い網」は有していない。「自動車事故が起きようと起きまいと全国に査定網を置かなければ、損害保険会社としては機能しない」ため、自動車保険のために全国に査定網を置き続けなければならない。「契約が取れようと取れまいと、事故が起きようと起きまいと」である。損害保険会社の社会的使命として、それが当然だからである。しかし、「そのコストたるや」である。多くの生保の損保子会社が自動車保険をメイン商品に選んだことは企業戦略上のミス、「『損害保険会社として、主戦場(戦略ドメイン)選択の失敗』であった」と言わざるを得ないのではないだろうか。

このように、損害保険会社の経営に大きな影響を与える存在が、上記②の事業費である。その事業費を、キャプティブコンサルティング会社、運営管理会社に委託、保険金の支払い査定は、元受保険会社がおこなうことによって、「事業費を大幅に圧縮できている保険会社がキャプティブ」なのである。非常に効率的な損害保険経営ができる存在がキャプティブなのである。

今回のまとめ

「キャプティブを子会社として設立する」ということは、それまで「損害保険会社が引き受けに応じなかったリスクを引き受けるために設立する」という目的だけでなく、損害保険会社で引き受けていた、つまり「自社から外に出していたリスクを自社内に抱え込む」ことにもなる。したがって、「損害率の低い保険」をキャプティブの対象とすることは、重要なことであといえよう。

前述のとおり、キャプティブはコスト構造の面から非常に効率的な運営ができる企業体であり、キャプティブの設立、運営に相応しい規模の損害保険料が検討できる企業であれば、是非取り組むべき企業戦略であると考える。その設立メリットを大いに享受できる具体的な保険種目については「キャプティブ6」で述べていきたい。