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キャプティブ 2020.02.21

CA 7 地震保険制度の限界 Limitations of the Earthquake Insurance System

For those who prefer to read this column in English, the Japanese text is followed by a British English translation, so please scroll down to the bottom of the Japanese text.

2013年3月18日、内閣府中央防災会議の地震対策検討ワーキンググループは、「今後発生する可能性のあるマグニチュード9クラスの巨大地震、南海トラフ地震の被害は、四国や近畿、東海などの広域に及び、東日本大震災を大きく上回り、その経済被害は最大で220兆円超になる」と、また同年12月19日、首都圏直下地震の被害対策を検討してきた国の有識者会議は、「今後30年以内に70~80%の確率で起きるとされる『首都圏直下地震』は、『マグニチュード7級の地震であり、その経済被害が約95兆円』」と発表した。

本年、2020年2月7日気象庁が発表した「南海トラフ地震関連解説情報」においても、「南海トラフ沿いの大規模地震(M8からM9クラス)は、『平常時』においても今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です」と記されている。

これらの経済的損害に対応する備えが「地震保険」であるが、その内容をよくご存じであろうか?

1.平安時代の「東日本大震災、首都圏直下地震、南海トラフ大地震」

794年(延暦13年)桓武天皇が平安京(現京都市)に都を移し「平安時代」が始まって75年後、869年(貞観11年)に2011年の東日本大震災と震源地を同じく三陸沖とする、推定マグニチュード8.4以上の「貞観(じょうがん)地震」と言われる大震災が起きた。

その9年後、878年(元慶2年)元慶(がんぎょう)地震と呼ばれる、関東を震源とする推定マグニチュード7.4以上の大震災が起き、関東地方南部に大きな被害をもたらした。さらに、その9年後、887年(仁和3年)、南海トラフを震域とする推定マグニチュード8.6と言われる巨大震災、「仁和(にんな)地震」が起きた。

仁和地震は、東海・東南海・南海が3連動した南海トラフ沿いの巨大地震であり、大阪湾に大津波が発生した。宇多天皇、醍醐天皇の勅で、菅原道真が編纂の実質的中心者だったと言われる平安時代の歴史書、「日本三代実録」には、震源地から遠く離れた「京都においても多くの建物が潰れ、甚大な被害を出し、さらに五畿七道諸国に亘り建物の倒壊、津波によって多数の溺死者を出したこと」が記録されている。

2011年から9年目が、本年2020年にあたるため、「首都圏直下地震が起き、さらに近い将来、南海トラフ大地震が起きるのでは」と懸念を持つ人たちが多いと聞く。

2.地震保険の支払い―保険金の削減

「地震保険証券」が保険会社から送られてきたとき同封されている「普通保険約款(保険引受条件の詳細を記した冊子)」には、以下のような記述がある。また、その準拠法である「地震保険法(地震保険に関する法律)」の該当箇所も併せて引用する。(青字は筆者が付した)

地震保険普通保険約款第7条(保険金支払についての特則)

(1)地震保険法第4条(保険金の削減)の規定により当会社が支払うべき保険金を削減するおそれがある場合は、当会社は、同法およびこれに基づく法令の定めるところに従い、支払うべき保険金の一部を概算払し、支払うべき保険金が確定した後に、その差額を支払います。
(2)地震保険法第4条(保険金の削減)の規定により当会社が支払うべき保険金を削減する場合には、当会社は、同法およびこれに基づく法令の定めるところに従い算出された額を保険金として支払います。

地震保険法(昭和四十一年法律第七十三号 地震保険に関する法律)(保険金の削減)

第四条 前条第一項の規定による政府の再保険契約に係るすべての地震保険契約によって支払われるべき保険金の総額が、一回の地震等につき、当該再保険契約により保険会社等のすべてが負担することとなる金額と同条第三項の規定による政府の負担限度額との合計額をこえることとなる場合には、保険会社等は、政令で定めるところにより、その支払うべき保険金を削減することができる。

3.地震保険制度―「財務省のホームページ」より

地震保険制度の概要」のなかにある、「地震保険の概要」と「政府による再保険」の項には次のような記述がある。(青字は筆者が付した)

地震保険の概要
地震保険の対象は「居住用の建物と家財」です。
火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・ 拡大した損害は補償されません。
地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提となります。地震保険は火災保険とセットでご契約ください。すでに火災保険を契約されている方は、契約期間の中途からでも地震保険に加入できます。
地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。

政府による再保険
地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、再保険料の受入れ、管理・運用のほか、民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計において区分経理しています。
1回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額を超えない範囲内のものでなければならないとされています。
現在、その金額は11兆5,662億円であり、民間保険責任額と合計した1回の地震等による保険金の総支払限度額は11.7兆円です
総支払限度額は、これまでも関東大震災クラスの地震と同等規模の巨大地震が発生した場合においても対応可能な範囲として決定されています。過去、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震が発生した際にも、保険金の支払額は総支払限度額内であり、円滑に保険金が支払われております。
なお、万一、この額を超える被害地震が発生したときには、被害の実態に即し、また、被災者生活再建支援制度の活用など他施策も考慮しつつ、保険制度の枠内にとらわれず幅広い観点から、財源の確保も含め、適時適切に政策判断が行われるものと考えております。

つまり、地震保険の対象となる「個人の住居、家財」等に地震保険が掛けられていて、万が一、「1 回の地震等による損害保険会社全社の支払保険金総額が11.7兆円を超える場合」、その「支払われる保険金」は、「全損、大半損、小半損または一部損の算出保険金× 11.7兆円」を「算出保険金総額で控除した金額」となるということである。

これまで大地震、 東日本大震災が発生した際にも、削減することなく保険金は支払われているが、万が一「算出保険金総額」(=全保険会社が支払う保険金総額)が11.7兆円を越える場合、支払われる保険金の額は、「算出保険金総額」(=全保険会社が支払う保険金の総額)を分母に置いて分子に11.7兆円を置き、それに「自分に支払われるべき保険金」を乗じたものになるということである。

南海トラフ大地震が発生、最大損害予測値の220兆円の「算出保険金総額」(=全保険会社が支払う保険金総額)が発生した場合、「2000万円の保険金額で地震保険を掛けていて、保険金額満額の支払い対象になる損害が発生した場合」は、「2000万円×11.7兆円÷220兆円=約107万円の保険金が支払われる」という計算になるということである。

4.現在の地震保険制度の限界

2019年3月27日成立した2019年度の日本の国家予算は「過去最大の101兆円」であるが、一方、南海トラフ地震の被害額の想定はそれを遥かに凌ぐ規模、実にその倍220兆円である。自由主義圏では、米国に次ぐ経済規模を持っている日本が、一国を挙げて「首都圏直下地震、南海トラフ地震」等の巨大地震に対応できる「準備金」は11兆円あまりである。

しかも、この政府の再保険が最終的にリスクを取る「地震保険」の対象から、企業、団体が有する建物等の財産は除外されているのである「地震保険の補償対象」は「居住の用に供する建物および家財(生活用動産)」であり、「以下のものは対象外」と明示されている。

工場、事務所専用の建物など住居として使用されない建物1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車等」

企業、団体の建物等の財産に対しては、ごく一部の外資系損害保険会社が提供する地震保険商品があるが、その対象となるのは、「保険金額が5~30億円の企業が所有する財物」であり、かつ支払限度額は、「1億円、3億円、5億円の3プラン(1事故及び年間通算限度額)」から選択するものである。さらに「海岸線から2km以内に所在する物件は対象とならない」等、「津波による被害を実質的に免責にしている」ため、対象企業、そして補償範囲もかなり限定的であると言われている。

5.企業向け地震保険の普及率

世界有数の地震国である日本だが、企業向けの地震保険の普及が進んでいない。阪神・淡路大震災、東日本大震災によって契約件数は増加しているが、加入率は全国の企業の1割弱程度であり、地震への関心が高い宮城県や高知県などでも2割程度にとどまっている。

その理由としては、「構造的な原因」が挙げられる。内閣府が2016年10月に中小企業を対象に行ったアンケートでも、約7割の企業は災害時に最も有効なものは、「手元資金の確保」を挙げ、地震保険を上回った。その背景としては次の要因が挙げられる。

「企業向け地震保険の保険料は、『火災保険の保険料の数倍から数十倍』である。
②そして、「地震が起きなくても保険料は戻ってこない掛け捨て」だからである。

6.自社のみの損害率で保険料が決まらない事情

また、企業向け地震保険は、損害保険会社が海外の再保険会社の集団と交わした再保険契約を基に、損害保険会社が自らの判断で引受けの可否や保険料を決めるため、その損害保険会社が引受けた地震保険全体の損害率が保険料に大きく影響してくる。

つまり、自分の会社の保険料は、その損害保険会社が引受けた日本全国の地震保険の損害率(保険金の支払い状況)によって変わってくるのである。「自分のところは津波の心配もないし、また建物もかなり頑丈、一部は免震構造に近い・・」と思っていても、まったく関係の無い企業の地震保険の損害率が影響するのである。

現に、東日本大震災直後、海外の再保険会社が再保険料を大幅に引き上げたため、損害保険会社各社は企業に保険料の値上げを求めた。しかし、そのような大幅な値上げは企業側も吸収できないため値上げに応じず、当時はその一部しか転嫁できていなかった。その後の断続的な地震保険の値上げは、その赤字だった収支を均衡させる目的であったと言われている。

また、日本特有の「何かあったときには、行政が助けてくれる。いや助けるのが当然であるというモラルハザードがあるのではないか」という指摘もある。損害保険会社からも「普及が進まず、再保険にかなりの部分を出すため利幅も薄い地震保険に注力するより、サイバー保険や他の新商品を販売する方がいい」という本音も聞こえてくる。さらに、リスクに警鐘を鳴らす役割を持つ「リスクマネージャー」の存在の無い企業がほとんどであることも、地震保険を敬遠する一因になっていると考えられる。

しかし、「南海トラフ地震は、概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年))が発生してから70年以上が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高まってきています。」(「気象庁」ホームページ)という状況である。したがって、善管注意義務・忠実義務の点からは、このリスクに真摯に対応することが求められており、それがなされずに会社に大きな損害を発生させた場合は、会社法423条から責任を問われる可能性もあると考えざるを得ない大きなリスクと言えるのではないだろうか。

今回のまとめ

南海トラフ地震の発生によって受ける経済的な損害を回復、補償するために必要な金額は、最大で日本の国家予算の倍、220兆円となる。

南海トラフ地震で最も懸念されているのは、「東海地震、東南海地震、南海地震と地震が連動して起きること」である。東日本大震災からまもなく9年経つが、いまだに余震が起きていることからも、万が一南海トラフ地震が起きた場合、その揺れが他の地域の大地震を誘発する危険性も考えなければならない。しかし、通常得られる地震保険の引受枠は小さく、また保険料も高い状況である。

この状況を変えるには、「自助努力」しかない、日本が国家を挙げてリスクに対応できない規模のリスクが発生する事態が到来する可能性があるのであれば、目を海外に転じて、「海外の力」を借りることであろう。個人には、なかなかできることではないが、企業はそれができる存在である。

キャプティブは、そのために企業が取り得るベストな手段といっても過言ではないだろう。「自分の会社の保険料は、その損害保険会社が引受けた日本全国の地震保険の損害率(保険金の支払い状況)によって変わってくる」ことが無い、自社専用の保険を掛けることが出来る「自社専用保険会社」がキャプティブである。

「早めの対応」で「まさか」に備える本格的なリスクマネジメントをする時ではないだろうか。

執筆・翻訳者:羽谷 信一郎

English Translation

Captive 7 – Limitations of the Earthquake Insurance System

On 18 March 2013, a working group of the Cabinet Office’s Central Disaster Prevention Council announced that “a Nankai Trough earthquake, which is likely to occur in the future and is of a magnitude of 9, would cause damage to large areas, including Shikoku, Kinki, and Tokai, which would greatly exceed the damage caused by the Great East Japan Earthquake and cause economic damage of up to ¥220 trillion or more”. On 19 December of the same year, a meeting of national experts who had been studying damage control measures in the event of an earthquake with an epicenter directly beneath the Tokyo metropolitan area announced that “an earthquake with a 70-80% probability of occurring within the next 30 years will be a magnitude 7 earthquake with economic damage of approximately 95 trillion yen”.

This year, on February 7, 2020, the Japan Meteorological Agency released a report entitled “Explanatory Information on the Nankai Trough Earthquake,” which stated that “The probability of a major earthquake (M8 to M9 class) along the Nankai Trough, even under normal circumstances, is 70 to 80%, and as more than 70 years have already passed since the Showa Tonankai and Showa Nankai earthquakes occurred, the situation is highly urgent.”

You may be familiar with the concept of “earthquake insurance” to prepare for these economic losses?

1. “The Great East Japan Earthquake, the Tokyo Metropolitan Area Earthquake, and the Nankai Trough Earthquake” in the Heian Period

In 794 (Enryaku 13), 75 years after Emperor Kanmu moved the capital to Heian-kyo (present-day Kyoto) and the “Heian period” began, in 869 (Jogan 11), a great earthquake with an estimated magnitude of 8.4 or greater occurred, the epicenter of which was off Sanriku, the same as the 2011 Great East Japan Earthquake.

Nine years later, in 878 the Gangyou earthquake, which is estimated to have had a magnitude of 7.4 or higher, occurred in the Kanto region, causing extensive damage in the southern Kanto region. And, nine years later, in 887 (Ninna 3), the Ninna earthquake, a huge earthquake with an estimated magnitude of 8.6 on the Richter scale, struck the Nankai Trough.

The Ninna earthquake was a triple interlocking earthquake along the Nankai Trough, in which the East Sea, the Tonankai Sea, and the Nankai Sea were interlocked, and a huge tsunami was generated in Osaka Bay. According to the “Nihon Sandai Jitsuroku”, a history book of the Heian period (794-1185), compiled by the emperors Uda and Daigo, with Michizane Sugawara as the central editor, It has been recorded that many buildings were destroyed and extensive damage was caused in Kyoto, far from the epicenter of the earthquake, and many people drowned due to the collapsed buildings and the tsunami throughout the five and seven provinces.

As this year 2020 is the ninth year since 2011, we hear that many people are concerned that an earthquake directly below the Tokyo metropolitan area has occurred and that a major Nankai Trough earthquake is likely to occur in the near future.

2. Earthquake insurance payments – Reduction in Insurance Claims

When an earthquake insurance policy is sent from the insurance company, the booklet enclosed with the policy (a booklet detailing the underwriting conditions) contains the following statement. In addition, the relevant section of the Earthquake Insurance Act (the Act relating to earthquake insurance), which is the governing Act of the policy, is also cited.

Article 7 of the general terms and conditions of earthquake insurance (special provisions for payment of claims)

(1) In the event that there is a risk of reduction of the insurance benefit payable by the company in accordance with Article 4 (Reduction of Insurance Benefit) of the Earthquake Insurance Act, the company shall make an approximate payment of part of the insurance benefit payable in accordance with the provisions of Article 4 (Reduction of Insurance Benefit) of the Earthquake Insurance Act and the laws and regulations thereunder, and shall pay the difference after the insurance benefit payable is fixed.
(2) In the event that the company reduces the amount of insurance benefit payable pursuant to Article 4 (Reduction of Insurance Benefit) of the Earthquake Insurance Act, the company shall pay the amount calculated in accordance with the provisions of the same Act and the laws and regulations thereunder as insurance benefit.

Earthquake Insurance Act (Act No. 73 of 1966 on Earthquake Insurance) (Reduction of Insurance Claims)

Article 4 If the total amount of insurance benefits payable by all earthquake insurance policies pertaining to the government’s reinsurance contracts pursuant to the provision of paragraph 1 of the preceding Article exceeds the sum of the amount to be borne by all of the insurance companies, etc. pursuant to the reinsurance contracts and the maximum amount of the government’s burden pursuant to the provision of paragraph 3 of the said Article for each earthquake, etc., the insurance companies, etc. may reduce the amount of insurance benefits to be paid pursuant to the provisions of Cabinet Order.

3. Earthquake insurance system – from the website of the Ministry of Finance

In the section of “Earthquake Insurance System Overview” and “Reinsurance by the Government” in the “Earthquake Insurance System Overview” section, the following statement is made.

”Summary of Earthquake Insurance
Earthquake insurance covers “residential buildings and household goods”.
Fire insurance does not cover damage caused by fires or fire spread or expansion caused by earthquakes.
Earthquake insurance is attached to fire insurance, so it is a prerequisite for purchasing fire insurance. Earthquake insurance should be purchased in combination with fire insurance. If you already have fire insurance, you can purchase earthquake insurance in the middle of your contract period.
The purpose of earthquake insurance is to contribute to the stability of the lives of earthquake victims by providing reinsurance by the government for huge earthquake losses that exceed a certain amount of earthquake insurance liability assumed by private insurance companies.

Reinsurance by the Government
With the aim of contributing to the stability of the lives of earthquake victims, the government reinsures the earthquake insurance responsibilities of private insurance companies, and in addition to accepting, managing, and administering reinsurance premiums, the special account for earthquake reinsurance is used to pay reimbursement in the event of a major earthquake that cannot be handled by the private sector alone.
The total amount of reinsurance payment to be paid by the government as a result of a single earthquake or other event must not exceed the amount approved by the Diet each year.
Currently, the total amount is 11,562.2 billion yen, and the total amount of insurance claims payable for a single earthquake, etc., combined with the amount of private insurance liability, is 11.7 trillion yen.
The aggregate limit has been determined in the past as the amount that can be paid in the event of a major earthquake of the same magnitude as the Great Kanto Earthquake. In the past, even in the event of major earthquakes such as the Great Hanshin-Awaji Earthquake and the Great East Japan Earthquake, the amount of claims paid has been within the total limit, so that claims have been paid out smoothly.
In the unlikely event of an earthquake that exceeds this amount, policy decisions will be made in a timely and appropriate manner, including the securing of financial resources, from a wide range of perspectives that are not confined to the insurance system and that take into account the reality of the damage and other measures such as the utilization of the livelihood reconstruction support system for disaster victims.”

In other words, in the event that an earthquake insurance policy is taken out on an individual’s dwelling, household goods, etc., and the total amount of claims paid by the entire non-life insurance company for a single earthquake, etc., exceeds 11.7 trillion yen, the “claims paid” will be calculated as follows: “total loss, most loss, half loss, or partial loss x 11.7 trillion yen”. It means that the amount will be “the amount of total calculated claims, less any deductions.

However, in the event of a major earthquake, the Great East Japan Earthquake, claims have been paid out without any reduction.In the unlikely event that the “Total Calculated Claims” (= the total amount of claims paid by all insurers) exceeds 11.7 trillion yen, the amount of claims to be paid is calculated by placing 11.7 trillion yen in the numerator with the “Total Calculated Claims” (= the total amount of claims paid by all insurers) in the denominator and multiplying it by the “Claims to be paid to me”.

If a major earthquake occurs in the Nankai Trough and the maximum loss estimate of 220 trillion yen in “total calculated claims” (= total amount of claims to be paid by all insurance companies) occurs, “If you have earthquake insurance with an amount of 20 million yen and the full amount of the insured loss occurs,” the following formula is used: 20 million yen x 11.7 trillion yen / 220 trillion yen. In other words, the insurance payment will be only about 1million yen.

4. Limitations of the current earthquake insurance system

Japan’s budget for fiscal year 2019, which was approved on March 27, 2019, is the “largest-ever” 101 trillion yen, while the estimated damage from the Nankai Trough earthquake is much larger than that, indeed double that amount, at 220 trillion yen. Japan, the second largest economy in the free world after the United States, has only ¥11 trillion or so in reserve funds to deal with a major earthquake, such as the Tokyo metropolitan area earthquake and the Nankai Trough.

Moreover, the government’s earthquake insurance, which ultimately takes the risk of this government reinsurance, excludes property owned by companies and organizations. The “earthquake insurance coverage” is “buildings and household goods (household chattels) used for residential purposes” and explicitly states that “the following are not covered”:

“Buildings not used as a dwelling, such as factories and office buildings, precious metals, jewelry, bone and bones, currency, securities (checks, stock certificates, gift certificates, etc.), savings certificates, stamps, stamps, automobiles, etc., with a value of more than 300,000 yen per piece or set.”

A small number of foreign non-life insurance companies offer earthquake insurance products for the property of companies and organizations, including buildings, etc., which are insured for “property owned by a company with an insurable value of 0.5 to 3 billion yen”.And, there are three payment limits of ¥100 million, ¥300 million, and ¥500 million (one accident and annual aggregate limit). In addition, it is said that the coverage is quite limited because “properties located within 2km of the coastline are not covered” and “it essentially excludes the damage caused by the tsunami”.

5. Penetration rate of corporate earthquake insurance

Japan is one of the most earthquake-prone countries in the world, but earthquake insurance for businesses has not been widely available. Although the number of contracts has increased after the Hanshin-Awaji and Great East Japan Earthquake, less than 10% of companies across the country are insured, and even in Miyagi and Kochi prefectures, where there is a high level of interest in earthquakes, the percentage remains at around 20%.

The reason for this is “structural causes”. In a survey conducted by the Cabinet Office in October 2016 among small and medium-sized enterprises (SMEs), about 70% of companies cited “securing cash reserves” as the most effective thing to do in the event of a disaster, surpassing earthquake insurance. This is due to the following factors.

(1) “Premiums for commercial earthquake insurance are several to dozens of times higher than those for fire insurance”, and (2) Even if there is no earthquake, premiums are not refundable.

6. Circumstances in which premiums are not determined by the company’s loss ratio alone

In addition, the overall loss ratio of earthquake insurance policies underwritten by a non-life insurer has a significant impact on premiums because the non-life insurer decides whether or not to underwrite earthquake insurance policies and the premiums based on the reinsurance contracts signed by the non-life insurer with a group of overseas reinsurers.

In other words, your company’s insurance premiums will be affected by the loss ratio of earthquake insurance policies across Japan underwritten by that insurance company. Even if you think, “We don’t have to worry about tsunamis, our buildings are very strong and some of them are almost seismically isolated…”, the loss ratio of a completely unrelated company’s earthquake insurance will affect your premiums.

In fact, immediately after the Great East Japan Earthquake, foreign reinsurers raised their reinsurance premiums so much that non-life insurance companies asked companies to raise their premiums. However, the companies were unable to absorb such a large increase and did not agree to the hike, and at the time were only able to pass on part of the increase. Subsequent intermittent increases in earthquake insurance prices are said to have been aimed at balancing the deficit.

There is also the suggestion that, unique to Japan, “there is a moral hazard in the sense that it is natural for the government to help you if you have a problem”. Non-life insurers are also saying that they would rather sell cyber insurance and other new products than focus on earthquake insurance, which is not widely used and has thin margins as it pays out a significant portion of the cost of reinsurance. Furthermore, the fact that most companies do not have a “risk manager” to sound the alarm on risk is also thought to be a factor in their reluctance to purchase earthquake insurance.

However, “Nankai Trough earthquakes occur repeatedly, generally at intervals of 100 to 150 years, and more than 70 years after the last Nankai Trough earthquakes (the 1944 and 1946 Showa-Tonankai earthquakes), the imminence of the next Nankai Trough earthquake has increased.” (“JMA” website). Therefore, from the standpoint of the duty of care and duty of loyalty, companies are required to respond sincerely to this risk, and if they fail to do so and cause major damage to the company, it is a major risk for which they must be considered liable under Article 423 of the Companies Act.

Summary of this issue

The amount of money needed to recover and compensate for the economic damage caused by the Nankai Trough earthquake will be up to 220 trillion yen, double Japan’s national budget.

The biggest concern about the Nankai Trough earthquake is that it will occur in tandem with the Tokai, Tonankai, and Nankai earthquakes. Nine years after the Great East Japan Earthquake, aftershocks are still occurring, and in the unlikely event of a Nankai Trough earthquake, it is important to consider the risk that the tremors may trigger a major earthquake in another region. However, the usual quota for earthquake insurance is small and premiums are high.

The only way to change this situation is to make “self-help efforts”, and if there is a possibility that a risk of a magnitude too great for Japan to cope with on a national scale may arise, then it is time to turn our attention abroad and ask for foreign help. Individuals may not be able to do this, but companies are the ones who can.

It is no exaggeration to say that Captives are the best way for a company to do so. A captive is an insurance company that allows a company to carry its own insurance policy for its own exclusive use without having its premiums vary depending on the loss ratio (insurance payment status) of earthquake insurance throughout Japan underwritten by the insurance company.

It’s time to take a serious risk management approach to prepare for the “no way” by taking an early response.

Author/translator: Shinichiro Hatani